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モスバーガーでドライブスルー勢をゴボウ抜きした話

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 LINEで、「昼ごはん何食べる?」「モスバーガー!!」

 ということで、昼ごはんはモスバーガーになりました。夜勤明けから帰宅の途中、帰り道のモスバーガーに寄って帰ります。

 しかし、時刻は12時。私の住んでいるところはいわゆる郊外のベッドタウン的なところで、そこの住民のおよそ1割は「昼ごはん何食べる?」「モスバーガー!!」というやりとりをしますので、私がモスバーガーにたどり着いたとき、そのドライブスルーは何千何万もの住民で長蛇の列を作っていたわけですね。

 誇張しすぎたので正確に言い直しますが、それでも6台くらいの車がドライブスルーで並んでいて、私はもうドライブスルーの列に並ぶこともできず、とりあえず一般駐車場に車を停めました。これでもう一度ドライブスルーの列に並ぶのも、何だか面倒そうだったので、車を降りて店内で買うか、とテクテクと店に入りました。

 すると!なんということでしょう!店内はおどろきのガラガラ!!一人のおっちゃんが、端っこのほうで嬉しそうに何らかのバーガーを食べているのみ!ドライブスルーと店内のこの格差よ!?

 私は「しめた」とほくそ笑むと同時に、言い知れぬ罪悪感がこみ上げてくるのを感じました。このまま店内で購入すれば、ドライブスルーで並んでいる彼ら民をゴボウ抜きして、購入を果たすことができる。それは私が駐車場に停めて、店内まで歩くという一段階の上の努力を果たした対価とも取れるかもしれない、だけども店外の車の中でこの事実を知らずただ時間を待つ人のことを考えたら、それはフェアな行為と言えるのだろうか。

 私の中の天使と悪魔がお互いを睨み付ける。ただしそこで喧々轟々と議論を始めるほどのことでもない、結論は決まっているのですから。店内に入って、空のレジに行かない行為など現実的ではありません。私は逡巡を心に称えたまま、自動的に動く足に導かれレジに向かいます。遠く視界の端に垣間見えるドライブスルーの受け取り口を視線の真正面から捉えることができないまま、「南蛮チキンと…オニポテと…」と注文を呟きます。

 「そちらにおかけになってお待ちください」

 笑顔の店員さんに導かれるまま、私は腰をおろしました。そして考えます。私は何ら間違った行為はしていないけれど、このまま私がスムーズにモスバーガーを受け取り、そして店内から躍り出て、ドライブスルーの車の行列の横を通る時、果たして、その運転席に座るいくつもの目は、私をどんなふうに見ているのだろうか…。

 「お待たせしました」

 そんな一瞬の逡巡も許さぬように、暖かい袋が私の胸に渡されました。

 私は店外に出ます。

 視線は自分の車だけを見つめて…ドライブスルーの中からの視線と交差しないように…と歩みを進めるその時、ハッとしました。

 昔、医療漫画で、医療ミスのようなことをしてしまったときに、視線を合わせるのを避ける研修医に、家族の顔をまっすぐ見るように言うシーンがありました。その時、彼らがどういう表情をしているのか、それを逃げずに見ること。そうしないと、前には進めないということを、その漫画は伝えていました。

 

 そうだった。

 

 俺はこのゴボウ抜きを乗り越えて、前に進んでいかないといけないんだ。

 

 私の首はゆっくりと曲り、車の中の、運転席に向けられます。そこには、私を見返す運転手の視線が…。

 無くて、運転手さんは渡されてたメニューを一生懸命見ていました。何だかワクワクしているような感じに見えました。今ごろ、「焼肉ライスバーガーもいいなー!でもたまにはフレッシュバーガーなんてオシャレにやっちゃってもー?!ああーグラムチャウダーもつけちゃおっかなー!」みたいな感じなのでしょう。わかります!そういう考えてる時も最高に楽しいんですよね!そういえばさっき店内に入ってすぐに注文したから、あんまり考える暇もなくて何と無く勢いで頼んじゃったから、そういう楽しみ味わえなかったなー!世の中うまくできてるなー平等だなー!!

 で、帰って「モスバーガーうまいね」「うまいね」ともりもり食べて寝ました。モスバーガーおいしかったです。