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いきなり!ステーキの営業不振と糖質制限

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最近、「いきなり!ステーキ」というお店が経営ピンチだそうです。

 

「というお店」なんて書きましたけど、名前は皆さんご存知じゃないでしょうか。厚切りのステーキを普通の半額くらいの値段で提供するというスタイルのお店で、7年くらい前に1号店ができてから、破竹の勢いで店舗を増やして、現在は500店舗を超えているとか。

私も生活圏内に出来た時に一度行ってみたことがあります。おいしかったですが、思ったよりも安くはないという感覚でした。

 

そんな「いきなり!ステーキ」ですが、2018年くらいから営業成績が落ちてきて、今年にはお店を閉める店舗も増えているそうです。本当かはわかりませんが、ネットの情報では、値上げによる影響、客の飽き、多店舗を出しすぎて自社競合してしまったとか、従業員の質が落ちたなどが原因と書かれていました。倒産の危険も出てきているらしく、社長が「お願いですからご来店ください」というメッセージを店頭に張り出したことで話題になりました。

そんな「いきなり!ステーキ」を束ねる会社の社長さんは一瀬さんという方で、いきなり!ステーキが全盛だった頃に、よくネットで「成功者が経営論を語る」的な雰囲気でインタビューに出ていました。たしか、その時に本も出版していたと思うので探してみました。

 

「いきなり!ステーキ 常識を突き破る不滅の経営」という本です。2015年、いきなり!ステーキが波に乗って、経営拡大を続けていくまさに絶盛期のころに書かれた本です。

 

これは・・・。

正直、これを今読むのは、なんだか禁断のことのような、罪悪感のようなものすら感じました。

数ある自己啓発本、経営論みたいなものは、すべからく成功者が書いているわけで、その成功の結果に裏付けされた説得力で成り立っているわけですが、今この経営が破綻しかけている「いきなり!ステーキ」の経営論を当時どう語っていたのか。

そこに書かれたことは、もしかしたら成功者の自伝を読むより何倍も意味がある情報が書かれているのかもしれない。買ってみました。(なお、いきなり!ステーキは今も新たな事業にチャレンジしていて、倒産しているわけではないので、失敗者と揶揄するつもりはありません。が、今のこの窮状を予想していたわけでもないと思うので、学ぶことが多いかと思ったわけです・・・)

 

さて、読んでみますと。基本的な通底として描かれているのは、一瀬社長がいかに失敗して、いかにそれを乗り越え成功してきたかという、自伝的な内容でした。コックとして修行をして、自分の店を持ち、店舗を出すようになったこと。しかし、何度も経営難を経験しており、倒産の危機を幾度と乗り越えてきたとのことでした。

 

その経営難は、一度は狂牛病の被害による肉産業のダメージであったようですが、「多店舗経営をしすぎた」こと、「立地調査を行わないまま出店を決め、従業員の質も落ちたこと」などがあったそうです。

えっ、それって今のいきなり!ステーキの経営不振の原因と一緒じゃないですか。と驚きましたら、そこにまさにコメントがされていました。そのまま引用しますと、

 

今、「ペッパーランチ」の急速展開当時と同じ行動をとっています。ビジネスモデルとして店が成功したら次々と意欲的に出店するということは、私の中に本質的に備わっている習性だと思います。しかしながら、私は同じ轍を踏みません。それは現在、人材は育っているし、お客様満足を考えた運営をしているし、自分がおいしい、お値打ちだと思えるステーキを提供しています。(いきなり!ステーキ 常識を突き破る不滅の経営:一瀬邦夫)

 

つまり、依然の失敗と同じ道は進んでいるが、今回は大丈夫と言っています。実際は大丈夫ではなかったわけで、今見ると、この時にそれを誰かが止めておくべきだったと、結果論では思えてしまうのですが。しかし、その当時同じ轍を踏まないと社長が確信していた理由として、彼は二つあげています。一つは、お客様満足を考えた運営をしているから。もう一つは、人材が育っているから。

 

社長は以前同様の経営危機に陥ったときに、どう対処したか、二つあげていました。私が意訳したところですと、一つはキチンと叱ること。もう一つは、夢を語ることのようでした。そういったことをキチンと行うことが、社員教育であると考えており、人材育成になっていると感じられているように思えます。だから、今ならばいきなり!ステーキは急速店舗展開をしても大丈夫、という理念だったようです。

 

店舗をたくさん増やすことが正しかったのか、間違っていたのか。

それは結果論としては間違っていた可能性のほうが今は正しいと思うのですけれど、今もいきなり!ステーキが躍進を続けていたら、正しかったとなるわけで、そもそもこの本が発売されてから2017年くらいまでは、株価が物凄い勢いで上がるくらいの急成長を遂げた会社だったわけですから、当時までは正しかったわけです。

 

この本に書かれていたことは、「おいおい大丈夫か」と思われることも多かったのですけれど、それはきっと今の窮状の中で読んでいるからそう感じるだけであって、ここからいきなり!ステーキがまた復活してくるならば、数年後にはこの本はやはり素晴らしい経営論だとなるわけでしょう。ただ、経営論とか、自己啓発本は色々あって、どれも謎の説得力があって迫ってくるのですけれど、それとは違う危うさをなんだか感じるような本ではありました。綱渡り感がすごいのです。それは繰り返しますが、今読んでいるからそう感じるだけかも、しれないのですけれど。

 

さて、そういうことはともかくとして、私が今日言いたかったことはもっと別にあります。

この本を読んで、また最近のネットを見ていて思ったことですが。この本にもネットにも一言も出ていなかったので、驚いたのですが・・・

 

いきなり!ステーキが売れたのって、「糖質制限ブーム」に乗っかったからじゃないですか?

 

糖質制限が痩せる、コメよりステーキを食べなさい、みたいなことが数年前に爆発的に流行って、その時流にのってこの「いきなり!ステーキ」が売れたんですよね。

社長はそれには一言も触れていなくて、「ステーキを食べることは誰にとっても最高のことなはず。それを安く提供できるシステムを作ったのが勝因」という印象で語っていました。確かに、ステーキは美味しいですけれど、日本人にとってはお寿司などに比べれば愛されるレベルは低いと思うのです。

 

ここ数年、糖質制限ブームは下火傾向です。糖質制限が寿命を縮めると言う大きなデータも2018年には出ています。ライザップの業績不振も同時期に起こってきています。

 

いきなり!ステーキは、糖質制限の時流にのって拡大し、その衰退に伴い不振に陥っているというのが私の肌感覚の考えなのですが、どうなのでしょうか。社長が考えられている、「ステーキを食べるのは幸せ」という根本から違っていると思うのですが、どうでしょうか。残酷なようですが、社長はこの本の中で、「いきなり!ステーキはいつか回転寿司と同じ位置付けになる」と語っていましたが、私は少なくとも、ステーキよりも回転寿司が好きな立場なのです。