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コロナウィルスの簡易検査を流通させるべきか?

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 Twitterを見ていますと、「コロナウィルスの検査(PCR検査)をもっと沢山するべきだー!国民の不安の声に応えよー!」という意見(主に市民派)と、「検査をしても治療方針が変わるわけではないのだから、医療体制の保持の為、軽症なら検査はしないべき」という意見(主に医療者や厚生省)が、戦っております。

 

 私は、前者の気持ちもわかりますが、後者の意見に従った方が、社会としては平和になる可能性が高いと思っています。それは先日も言ったように、軽症の人が病院や検査機関に殺到したら、そこでコロナウィルスが広まっていく可能性が高いからです。ただ、その「軽症の人はなるべく自宅待機を」という理論のデメリットがあるとすれば、インフルエンザの治療が遅れることでしょうか。

 

 コロナウィルスと同じように、インフルエンザも肺炎になります。高齢者や持病のある方がそうなりやすいし、死亡者も出ます。そして、インフルエンザには劇的な効果ではないにしろ、治療薬があります。そのため、コロナウィルスによって受診を控えたが故に、実はインフルエンザの方でリスクが高い層に、初期に治療を施せなくなるのはデメリットと思います。

 

 ただ、それらのデメリットを踏まえても、今のコロナウィルスパニックになりかけてる社会をみれば、やはり軽症の方は受診を控える方針のほうが(社会全体としては)最大幸福だとは思います。しかし、個々人の気持ちを思えば、社会の最大幸福を求める気持ちよりも、自分にとっての最大幸福を追求したくなる気持ちは、あるものとして考えてしょうがないかもしれません。これは自己犠牲の精神とか、モラルの問題もあります。

 

 ただ、「自宅で簡単にできる検査キットができればよいのでは?」と思いますよね。現在病院などで行っているインフルエンザの簡易検査は、鼻につっこんで、液を垂らすだけなので、説明書を見れば、たぶん医療者じゃなくてもやれます。それらを市販することで、インフルエンザであることを早期に診断して、高齢者やリスクが高い人は早期に病院に受診できるようにするのはメリットがあるのではないでしょうか。

 

 それを言うなら「コロナウィルスの簡易検査キットを早く流布すべき」とも思うかもしれませんが、現在の研究室でやるようなPCR検査ですら100パーセント正確ではなく、偽陰性(本当はウィルスがついているけど、検査では出てこない)ことが多々ありますので、簡易キットならばもっとそういうことが出るでしょう。そうなると、仮に「コロナウィルスだったら仕事を休もう」とかそういう気持ちだった方が、実は罹患しているのに、簡易検査で陰性がでたので、これで安心と思って社会を歩き回る可能性があります。そうなってしまうリスクがありますので、やはり、そもそも調子が悪い方はやはり休むしかない、というのが今の結論だと思います。

 

 ただ、仮にそう言う検査キットが実装されたとしたら、「陽性と出た人が、普段以上に気を付けるだろうメリット」はあると思います。医師や医療者の意見では、「陽性であろうと陰性であろうと、最大限の伝染さない努力をすべきなので、検査をしてもかわらない」というものがありますでしょうが、現実問題、ちょっと風邪かな?くらいの気持ちと、コロナウィルス確定です!と言われた時では、一般の人が努力する程度は変わってしまうでしょう。そこを努力不足や意識不足と捉えるのは、性善説がすぎると思います。それに、ぶっちゃけてしまえばちょっと調子悪いくらいの医師だって多分大勢働いています。なんなら、当直明けの医師の100パーセントはだいたいちょっと調子が悪いので、それを全員休むように、というのは今の医療では無理でしょう(将来は目指すべきところですが)。

 

 ですので、私としては「自宅でできる簡易コロナウィルス検査(と簡易インフルエンザ検査)を流布しつつ、ただその結果が信頼のおけるものではないことをわかりやすく明記して使う」ことがベストなのではないかと思いますが、どうでしょうか。そうすることに、どのくらいの費用や労力がかかることはわかりませんので、コロナウィルスや、もしかしたら続く五輪中止に伴う不景気も考えますと、机上の空論なのかもしれませんが…1現場の医師としてはそう感じています。

 

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